一票の格差に反対のブログ

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やはり、韓国・梨泰院(イテウォン)は痛い?

11/7(月)

 ハロウィン直前の週末、多くの若者が集まる韓国・梨泰院で起きた大惨事。その裏では一部の若者たちがあまりに無軌道な行動をとっていた。

阿鼻叫喚の地獄絵図

 「なにこれ! ウケる!」

 救助活動を手伝っている最中に聞こえてきたはしゃぐような声に、朴恩周さん(20代・仮名)は耳を疑った。

 目の前に広がるのは阿鼻叫喚の地獄絵図。隙間なく密集した群衆が、さまざまな言語で助けを求めて絶叫していた。

 「助けて!」「押せ!」「戻れ!」――。

 四方八方から押された圧力によって、誰もが苦悶に満ちた表情を浮かべている。

 裂けそうなほど口を大きく開き、断末魔のような悲鳴を上げている女性。目を見開いたまま、動かなくなってしまった男性、顔色がみるみるうちに紫色に変わっていく少女。

 それなのに――。

 「酔っ払った男女が犠牲者にスマホを向けて、笑っていたのです。救急車の前で『セックス』と連呼しながら、飛び跳ねて踊っていた集団もいました。地獄があるとしたら、あの光景のことでしょう」(前出・朴さん)

横で躍りまくる若者たち
 10月29日、若者たちでにぎわう韓国・ソウルの梨泰院エリアで、午後10時15分ごろ群衆雪崩が発生した。

 日本人女性2人を含む、156名が圧死するという大惨事が起きた小道は、幅3・2mほど。その道の、長さわずか5・7mほどのスペースに約300人もの人々が押し込められた。

 多くの犠牲者は倒れて下敷きになったのではなく、立ったまま周囲の人に押し潰され圧死した。

 この大惨事にもかかわらず、犠牲者を好奇の対象とする野次馬が無数に存在したことはあまり報じられていない。

 中には救助され、下着姿や半裸状態で心肺蘇生をされている女性たちを性的な目で見ていた男性もいた。

 「失神した女性の服をわざと脱がし、救助や心肺蘇生に見せかけて身体を触っていた男性もいたそうです」(韓国留学中の日本人女子大生)

むき出しの「エゴと欲望」
 混乱に乗じて、ショックを受ける女性に励ますふりをして声をかけ、「お持ち帰り」を試みる男性もいたという。

 大勢の遺体が横たわる場所で、エゴと欲望をむき出しにする人々。

 まさに「鬼畜な現場」だった。

 この日、韓国人の夫と梨泰院を訪れていた川上恵理さん(20代・仮名)も、信じられない光景を前に唖然とした一人だ。

 「すぐ近くに、救助される人や死にそうな人たちがいたのに、町中にはクラブミュージックが爆音で流れ、お酒を飲んで踊りまくる集団をいくつも見かけました。現場に残された犠牲者の財布やスマホを盗んだ火事場泥棒もいたようです」

 犠牲者の多くは、四方から圧力がかかり、胸部や腹部が圧迫されて呼吸困難に陥る「外傷性窒息」を引き起こしたとみられている。

 「外傷性窒息は発症すると、血圧低下や血中の二酸化炭素濃度が上昇します。同時に静脈が圧迫されて血が戻らなくなり、顔色が紫色に変色する。そして二酸化炭素の麻酔作用で痛みや苦しさがわからなくなり、眠るように命を落とします。

 体重の5倍の力で圧迫された場合、およそ5分で死に至る。圧迫直後に救助されなかったら、助かりません」(法医学が専門の徳島大学・西村明儒教授)

SNSで「いいね」稼ぎ
 そうした意識不明の人々の傍らには、冒頭でも紹介したように、悲惨な最期を迎えた若者たちに手を合わせるのではなく、スマホのカメラを向けて撮影する人々の姿が多く見られた。

 「血だらけの道路、並んで横たわっている遺体、下着姿で心臓マッサージや人工呼吸を受けている負傷者、担架で運ばれる人などを撮影。フィルターなしでこぞってSNSに投稿していた人々がいて、問題になっています」(東京新聞論説委員の五味洋治氏)

 ジャーナリストの金敬哲氏も、思わず目を背けたくなるような惨状を狙って撮りに行く若者たちがいたと指摘する。

 「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している人たちが増えています。そうした人たちの多くが事故現場を撮影し、配信したのでしょう」

 そんな行動に対し、韓国国内からも、「あまりに恥ずべき行為だ」と批判の声が上がっている。

 一方で、前出の朴さんによると犠牲者に対する批判も多くみられるという。

 梨泰院のハロウィンは人が多く、「行かないほうがいい」と再三、注意喚起されており、「自業自得」というものだ。

先行きが見えない韓国
 批判の矛先は韓国政府や警察庁にも向けられた。

 事故発生が懸念されていたにもかかわらず、認識が甘く、対策が不十分だったからだ。

 4日、犠牲者を追悼する法要に出席した尹錫悦大統領は初めて公式に謝罪した。

 だが、今後の対応次第では政権を揺さぶる事態に発展する可能性もある。

 悲嘆と批判、同情や嘲笑などが入り混じって渦巻く中、このままでは別の場所で同じような事態が起きかねないと前出の五味氏は危惧する。

 「自然発生的なハロウィンイベントは、韓国では集まった人と気軽に盛り上がれるコミュニケーションの場として、若者に人気です。厳しい受験競争や兵役がある韓国で、ストレス発散になるこのイベントは自分を解放できる側面があるようです」

 その背景には、先行きの見えない韓国の社会で、若者たちの間に漂う諦念が垣間見える。

 「就職も結婚も難しい。夢もなく、他人には興味がないけれど、楽しいことだけには熱中する。今だけを生きる、といった刹那的な感覚の若者が増えています」(前出・金氏)

 悪夢のハロウィンは起こるべくして起こったのかもしれない―。