11/21(月)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b306a00e8fb963 …
年功序列で給与やポジションが上がっているにもかかわらず、それにみあった働きをしない「働かないおじさん」問題がこの数年、たびたび指摘されるようになった。
退職金の積み増しなどで退職を促す「早期退職制度」や、ある一定の年次に達すると、部長などの役職からおりる「役職定年制度」など、企業はあの手この手で中高年の処遇見直しを急いでいる。
70歳までの就業機会確保が努力義務となる時代を迎え、中高年の学び直し「リスキリング」が流行ワードにもなっているが、そもそも「働かないおじさん」であったとしても滅多にはクビにはならない、日本の解雇規制についてどう考えればいいのだろうか。
使用者側で人事労務問題に取り組む岡芹健夫弁護士は「横並びと安定が大好きな日本では、今のままだと、次世代の若者たちが割を食うことになってしまう」と語る。詳しく聞いた。(編集部・新志有裕)
●判例をもとに形成されてきた
ーー解雇規制については、正確には解雇権濫用法理であり、判例をもとに形成されてきたものです。これはどのようなものでしょうか。
1950年代に判例が出てくるようになって、だいたい1970年代には確立されました。そして、2008年に施行された労働契約法16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と明記されました。
解雇が有効か無効かの判断においては、裁判所からみて、解雇に正当な理由があるか、そして、解雇を避けるための手段を尽くしたかということが問われます。
この法理は、従業員を長期間丸抱えして、その生活を守る「日本型雇用システム」がベースとなっています。
特に経営難による整理解雇については、欧州などと異なり、配置転換をしてでも雇用を守ろうとしたかなどが問われます。また、使用者側に立証責任があることも特徴的です。
ーー「働かないおじさん」問題については、整理解雇というよりも、能力不足による解雇ということになるかと思いますが、それも困難なのでしょうか。
過度に著しく無能力か、改善の見込みがないということでないと解雇は認められません。それは大して働いていない、というレベルではありません。
この解雇の難しさに加えて、雇用慣行である年功序列型賃金と、賃金などを下げようとした時の「不利益変更の厳格さ」(一方的な労働条件の変更が法的に認められないこと)がセットになって、中高年雇用の問題が起きているわけです。
●「みんなと同じ」が大好きな国民性
ーー解雇権濫用法理が変わらないと、どのような弊害が出てくるのでしょうか。
すでに雇用契約を結んでいる中でも、比較的パフォーマンスの低い人を保護することになってしまいます。全体のパイが増えない中では、次世代の若者たちが割を食うことになるのです。本当にそれでいいのでしょうか。
裁判所も、採用をめぐる三菱樹脂事件の最高裁判決で、採用前と後とでは、労働者の保護の度合いが違うということを明記しています。
そうすると、正社員になったもの勝ちということで、ひとたび正社員になれば、解雇権濫用法理と年功序列賃金に守られます。賃金の原資やポストはその人が手放さないことになるわけです。退職勧奨や希望退職など、解雇によらないやり方もありますが、自発的に退職しない人は会社に残ります。
でも今は、いかに人と違うことをするかという時代なんです。みんなで安定していこうというだけでは厳しい。また、新規事業が大事な時代なのに、今の法制度のままでは、労働力が移動しにくいことが大問題です。
●今の世代ではなく、次世代のことを考えてほしい
ーー今後、解雇規制が変わっていく可能性はあるのでしょうか。
どうでしょうね。政治家は国民受けの悪いことを最終的にはやれないでしょうし、裁判所も先例と社会通念で動きます。ですから、一部の人を犠牲にするようなことを積極的にはやらないでしょう。
日本の生産性が低いのは、裁判官が過去に働かない者を守るバカな判決を出したからですか?
「働かないおじさん」を守る解雇規制 「割を食うのは次世代の若者だ」 弁護士が警鐘